イラスト:現栃木県美術作家連盟会長 渡邉 泰秀下古山区画整理地内の西の端は、旧石橋中学校跡地。
日曜日は少年野球チームの元気のよいかけ声と、年配者のゲートボール等の球技メンバーでそこは運動会のようににぎやかである。
その西を走っている県道の先は調整区域といって、農家の広い屋敷が
点在し、どの家も男体山から吹き下ろすからっ風を避けようとでもするように裏山に太い杉やけやきやナラ林を背負っている。
その林の裾野に添いながら、コンクリートの農業用水路がゆるやかにまがりつつ、田んぼの周囲をめぐり、姿川へと続いてゆく。
又、よしに覆われたその岸周辺は、無数のカモ達の住み家でもある。
凍てつく真夜、幅20M以上もある川面にたちこめた濃い白い霧はまるで
生き物のようにゆっくりと土手をこえると、カモ達が眠る刈田へと降りてくるのだ。
犬と散歩していると、7〜8羽のカモの群れが驚いたようにキシキシキシと金属音の羽音を立てながら一斉に黒い影となって飛び立ってゆく。
その先は深い海のような夜空が闇の大地を覆い、吐く息さえ聞き取れる程の静けさになる。
誰にも見られぬ刻を大自然の鼓動は圧倒的な迫力をもって迫ってくる。
私はひたすらに老犬と家路を急ぐ。
途中、かかしが腰を横に突き出したような、変則的な十字路がある。
わずか200M位の距離なのだが、その両脇は杉やブナなどの巨木が空を覆い、2M先は真っ暗で何も見えない。
幾層もの闇が重なっているだけである。
たった1本の暗い蛍光灯がぼんやりと道端の湿った腐歯を照らしている。
誰かがじっと息を殺してうかがっているようで、思わず鳥肌が立つ。
私はエイッと気合いを入れると、一気にこの林の道を駆け抜ける。
後ろからお化けが、前から強盗が追いかけてきそうでものすごく恐いのである。
でも、この森はナオ子ちゃんと石バーにとってはかけがえのない森なのだ。
どうしても解けない謎があるのだ。