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2008年06月15日

ハトの巣立ち

  ー とんだとんだ 1 , 2 の 3で

13.jpg

イラスト:現栃木県美術作家連盟会長 渡邉 泰秀

考え抜いた末私は、その熱いかたまりを金木犀の巣に戻した。
そしてミー子を家に閉じ込めた。
が、これこそ至難の業で、猫はいつの間にか姿を消すと、梅干しザルで囲った
金木犀の巣の周りをうろついている。
しかたなく昼はステンレスの鳥かごに入れ、木の下につるすことにした。
そしてわかったことがある。
朝6:00頃と夕方3:30分過ぎ、親バトが2羽必ず現れることである。
かごのうえにのって、中のヒナと一緒に羽ばたく為、鳥かごが
ブランブランと大きく揺れた。

餌を食べさせていたのだろうか?
翌日カゴの床はたっぷりの水分を含んだリング状の黒いフンが
いっぱいに散らかっていた。
とりあえず安心である。
小さい頭なのにヒナのくちばしは以外に長く、堅そうでいかつい形をしていた。
夕方、時々親の姿を見ない日があるため…気づかなかったのかもしれないが…

私は夜、かごを玄関に入れると黒いくちばしを無理に開かせ、
練ったきな粉や黄色い粟粒を押し込んだ。
飲み込んだかどうかはわからない。
嫌がって頭をブルルンとふり、振る度に黄色い粟粒と焦げ茶色の
産毛と白いフケのようなものがワッと宙に舞った。

「やめてよ!鳥インフルエンザにでもなったらどうすんのよ!!」
病院勤めの娘は3歳の我が子の手を引くと早々に部屋を出て行った。

さて、どうしよう…
体力がなくなってきているのだろうか?
目の上を眉毛のように囲んでいる金色の毛が時々目を閉じる度に
ヒナの瞼に覆いかぶさってくる…
とにかく、飛ぶ練習をさせなければ…

毎朝家族が出かけた後の庭に立って、私はヒナを乗せた掌を
ゆっくりと空へ伸ばした。
ヒナはバランスをとってよろめきながら、私の掌に細長い
いくつもの爪痕を立てた。

2人の静かな日が何日か続いた。


ある朝 ふとひとつのメロディが私の口をついた。

♪とーんだ とんだ 1,2の3で
 じょうずに とんだ とーんだ♪

歌のリズムに合わせて私の手がゆっくりと上下に動き
それに合わせるようにヒナの羽が大きく羽ばたいては、閉じた…。

テレビで見た大鷲そっくりの、雄々しく力強く、躍動感に満ちた、背羽。
その美しさに思わず息をのんだ。

「とーんだ とんだ 1,2の3でー♪」
親指にしっかりとつめを立てたヒナはその爪を浮かせるように
背伸びすると、ゆっくりと鷲のように大きな羽ばたきを繰り返した。

次回へ



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